ドローンの気象と環境・Lv1 入門・約 18 分

風と空を読む

風向は、風が吹いてくる方位で表します。西風は 270° で、向かう先ではありません。平均だけでなく、突風を見ます。耐風性能の目安は、突風も含めて余裕を残して使います。

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このレッスンで身につくこと

  • 風向(風が吹いてくる方位)と風速を読み、平均風速と突風の違いを説明できる。
  • 風上・風下で機体の進む速さ(対地速度)と所要時間が変わるしくみと、風が機体の力を超える状態を説明できる。
  • 雨・雷・霧・気温が、機体・バッテリー・見通し・操縦者の安全に与える影響を説明できる。
  • 風や空の情報から、飛ばす・待つ・やめるを、理由をつけて判断できる。

風を読む

風は「どこから」吹くのか

風は目に見えませんが、小さなドローンにとっては、飛行を大きく乱す要因のひとつです。風は、風向(どちらから吹くか)、風速(どれくらい強いか)、突風(急に強まる風)の 3 つで読みます。

北 0°(360°)南 180°東 90°西 270°機体西から吹いてくる風行く先は東
風向は、風が吹いてくる方位で表す

風向は、風が吹いてくる方位で、北を 0° として時計回りに測ります(気象や航空の報告では、北を 360° と書くことが多く、0 は風のない状態を表すことがあります)。西から吹く西風は 270° です。「270° なら西へ向かう風」と読むのは、逆です。

010203040506004812時間 [秒]風速 [m/s]突風平均(約 6 m/s)そのときの風速
風速の時間変化の例(架空の模式図)
メモ:平均と突風は、別の数字

平均風速は、決まった時間(10 分程度が多い)の風速を平均した値です。短い間だけ強くなる突風は、平均の中に隠れてしまいます。機体は「いま吹いている風」に反応するので、平均だけでなく、いちばん強い瞬間の値も見ます。発表元ごとに平均の取り方が違うので、数字を読むときは、定義も確かめましょう。風速の単位は、日本の気象観測や天気予報では m/s が多いですが、航空の気象報(METAR など)は kt、アプリは km/h や mph のこともあります。単位を必ず確かめましょう。1 m/s = 3.6 km/h です。地上で弱い風でも、高く上がると強いことが多い点は、次のレベルで数字にします。

風の中で、機体はどう動くか

機体は、空気の中を対気速度(空気に対する速さ)で進みます。風上へ向かうと風に押し戻され、地面から見た速さ(対地速度)は落ちます。風下へ向かうと、風に押されて速くなります。

向かい風(風上へ進むとき)対気速度8 m/s向かい風3 m/s対地速度5 m/s追い風(風下へ進むとき)対気速度8 m/s追い風3 m/s対地速度11 m/s
同じ対気速度でも、対地速度は風で変わる
対地速度 = 対気速度 − 向かい風の速さ (風上へ向かうとき)
対地速度 = 対気速度 + 追い風の速さ (風下へ向かうとき)風が機体の真正面、または真後ろから吹くときの式です。横から吹く風は、次のレベルで成分に分けて扱います。
例:往復すると、どうなるか

対気速度 10 m/s、風 2 m/s、片道 100 m とします。風下へは 100 ÷ 12 ≈ 8.3 秒、風上へ戻るときは 100 ÷ 8 = 12.5 秒で、合計は約 20.8 秒です。風のない日の 20 秒より、少し長くなります。遅い区間ほど長い時間を使うので、追い風で縮んだ時間より、向かい風で伸びた時間のほうが大きいからです。下のデモで、風上と風下の「地速」の違いを確かめましょう。

触って確かめよう:この場面は、レッスンの中で操作して確かめられます。

このパートの演習(レッスンで解けます)

  • 風の日に、ゲートを巡って降りる

風の限界と、天気の影響

風が機体の力を超えるとき

どんな機体にも、風に逆らって出せる力の上限があります。風が弱いうちは風上へも進めますが、風が上限に近づくほど、風上へは遅くなります。

機体が出せる対気速度の上限(教育用モデル)8.4 m/s風:ふだんの強さ5 m/s風:突風のとき12 m/s上限を超える↑ 上限
突風は、機体が出せる上限を超えることがある

風が上限を超えると、スティックを風上へ倒しても進めず、離すと風下へ押し流されます。GPS モードでも同じです。位置を保てるのは、風に逆らって推力を出し続けているからです。

注意:耐風性能は、平均ではなく突風で見る

取扱説明書には、飛ばしてよい風の強さの目安があります。これが耐風性能です。たとえば、教材の架空の機体の目安が 10 m/s だとします。最初に見た風の図は、平均が約 6 m/s なので余裕があるように見えますが、突風は約 11 m/s で、目安を超えます。平均だけで決めず、突風も含めて、目安に余裕を残して判断します。

ヒント:風に逆らうと、バッテリーも減る

風に逆らって進むほど、推力を多く使います。そのぶんバッテリーが早く減りやすくなります。風下へは楽に出ていけても、帰りは向かい風になります。帰りの分を残して計画しましょう。

雨・雷・霧・気温が飛行に与える影響

ドローンは精密な電子機器の集まりです。風のほかにも、雨、雷、霧、気温が飛行に影響します。何が起きるかと、その備えを順に見ていきます。

  • 雨: 水が電子部品に入って故障のもとになり、カメラのレンズも濡れます。雨雲レーダーで降り始めを読み、降る前に降ろします。防水をうたう機体でも、条件は取扱説明書の範囲で使います。
  • 雷: 空へ高く発達する積乱雲は、雷、急な強風、短時間の強い雨、ひょうをもたらすことがあります。雷鳴が聞こえたら、すぐ降ろして避難します。
  • 霧・夕暮れ: 見通せる距離(視程)が短くなり、機体の位置と向きが見えなくなります。見える範囲だけで飛び、見えなくなる前に降ろします。
  • 低温: バッテリーの電圧が下がりやすく、使える容量が減ります。使う直前まで保温し、離陸後はまずホバリングして電圧を確かめます。
  • 高温: 機体やバッテリーが熱をもち、空気が薄くなって推力の余裕が減ります。日なたに置かず、休ませながら使います。
積乱雲冷たい空気が降りてくる機体冷たい空気が地面で外へ広がる雨より先に、風向と風速が急に変わる
積乱雲の下では、冷たい空気が地面で外へ広がる
注意:雷は、雨より先に危険になる

雷鳴が聞こえるなら、すでに雷の危険がある範囲にいると考えます。雨が降っていなくても、遠くの雷でも同じです。積乱雲の下では、冷たい空気が地面に吹き下りて広がり、雨より先に風向と風速が急に変わることがあります。雷鳴が聞こえたら、続けずに、まず降ろして避難します。

ヒント:寒い日のバッテリー

寒いと、バッテリーの電圧が下がりやすく、使える容量も減ります。使う直前まで保温し、離陸したらまずホバリングして、電圧を確かめましょう。扱い方は、バッテリーのメーカーの指示に従います。放電の特性は、機体と電装の分野で詳しく学びます。

このパートの演習(レッスンで解けます)

空を読んで決める

空の変化を読む

天気の情報は、一度見て終わりではありません。前日、当日の朝、現地、飛行中と、飛ぶ前から飛んでいる間まで、何度も新しくします。

前日予報で風・雨・雷の見込み当日の朝レーダーと予報で見直す現地風向・風速・空を自分で観測飛行中風の急変・冷たい風・雷鳴を見張る
情報は、前日から飛行中まで更新し続ける
  • 予報(前日と当日の朝): 風、雨、雷の見込みがわかります。外れることもあるので、当日の朝にもう一度見直します。
  • 雨雲レーダー: 雨雲がいまどこにあり、どちらへ動いているかがわかります。先の予測がついたものもありますが、精度は限られます。
  • 現地の観測: 風向、風速、空の様子です。旗や木の揺れ、風速計で、いま、ここの風を確かめます。予報は「いま・ここ」までは教えてくれません。
  • 飛行中の見張り: 風の急な変化、冷たい風、遠くの雷鳴、暗い雲の広がりに気をつけます。
ヒント:サインを見たら、先に降ろす

風向が急に変わる、冷たい風が吹いてくる、遠くで雷鳴が聞こえる、暗い雲が急に広がる。どれか 1 つでも見えたら、理由を調べる前に、まず降ろします。降ろしてからでも、確かめる時間は取れます。

飛ばす・待つ・やめる

決めるのは操縦者(PIC)です。答えは 3 つあります。迷ったときは、飛ばす側ではなく、待つかやめる側に倒します。

  1. 飛ばす: 基準を満たし、風にもバッテリーにも余裕があるときです。飛んでいる間も、基準を見直し続けます。
  2. 待つ: 基準を満たさない、または情報が足りないときです。観測を続ける、時間をずらす、計画を短くするなど、待つあいだにできることがあります。
  3. やめる: 基準を満たさない、または状況がわからないままのときです。理由を依頼主に伝えて、次の機会に回します。

基準は、迷う前に先に決めておく

  • 突風が、機体の耐風性能の目安に届いたら、飛ばさない。
  • 雷鳴が聞こえたら、すぐ降ろす。暗い雲が近づいてきたら、計画を打ち切る。
  • 視程が短く、機体の位置と向きが見えにくくなったら、降ろす。
  • バッテリーが冷えている、または熱をもっているときは、そのまま使わない。
メモ:法令と運航者の基準

法令の定めは、f6「飛ばしていい場所・だめな場所」で学びます。実際の運用では、法令、機体の取扱説明書、運航者の基準のうち、いちばん厳しいものに従います(要確認)。判断の基準を前もって決めるブリーフィングは、f8「運航チームの基本」で扱います。

このパートの演習(レッスンで解けます)

  • 夕方の河川敷、雲が近づく

まとめ

  • 風向は、風が吹いてくる方位で表します。西風は 270° で、向かう先ではありません。
  • 平均だけでなく、突風を見ます。耐風性能の目安は、突風も含めて余裕を残して使います。
  • 風上へは遅く、風下へは速く進みます。風が機体の力を超えると、GPS モードでも押し流されます。
  • 雨・雷・霧・寒さ・暑さには、それぞれ備えがあります。迷ったら待つかやめる側に倒し、判断の基準は飛ぶ前に決めておきます。

Lv2 では、風を向かい風と横風の成分に分け、空気の密度や高さによる風の変化を数値で見積もり、METAR・TAF と気象庁のデータを読んで判断します。

このレッスンの用語

風向(ふうこう)
風が吹いてくる方位を、北を 0°(報告では 360° と書くことが多い)として時計回りに測った角度。西風は 270°で、吹いていく先ではない。
平均風速(へいきんふうそく)
決まった時間(気象観測では 10 分程度が多い)の風速を平均した値。短い時間だけ強くなる突風は、この平均に隠れてしまう。
突風(とっぷう)
平均より、数秒ほどの短い間だけ急に強まる風。向きが急に変わることも多く、機体の姿勢や位置を乱す。ガストともいう。
風上(かざかみ)
風が吹いてくる側。風上へ向かう飛行では、風に押し戻されて前に進む速さが落ちる。
風下(かざしも)
風が吹いていく側。風下へ向かう飛行では速く進めるが、風上へ戻るときに時間と電池を余分に使う。
対気速度(たいきそくど)
空気に対する機体の速さ。向かい風の中では、地面から見た速さ(対地速度)より大きな値になる。
対地速度(たいちそくど)
地面に対する機体の進む速さ。真正面・真後ろの風なら、対気速度から風の速さを引く(向かい風)か足す(追い風)。横風は成分に分けて考える。
耐風性能(たいふうせいのう)
その風の中でも姿勢と位置を保てる風の強さの目安。機種ごとの取扱説明書で確かめ、平均だけでなく突風も含めて余裕を見る。
積乱雲(せきらんうん)
上空へ高く発達する雲。雷、突風、短時間の強い雨、ひょうをもたらすことがあり、近づく前に飛行をやめる。
視程(してい)
見通せる距離。霧、雨、夕暮れで短くなる。機体の位置や向きが見えなくなる前に、飛行を切り上げる。

手を動かして確かめる

このページはレッスンの本文です。演習とシミュレーターは、レッスンの中で操作できます。

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更新日 ・シミュレーターは教育用の簡略モデルです