ドローンの航法と認識・Lv1 入門・約 18 分
自分の位置をどう知るのか
位置は、衛星の電波が届くまでの時間から距離を求め、複数の衛星の距離が重なる点として決まる(受信機の時計のずれも含めて、最低 4 機)。気圧・磁気・画像の手がかりには、それぞれ得意と苦手がある。気圧は高さの変化、コンパスは向き、光学フローは動きを教えてくれる。
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このレッスンで身につくこと
- 衛星の電波が届くまでの時間から距離を求め、複数の衛星で位置が決まる GNSS のしくみを説明できる。
- 気圧計・コンパス・光学フローが何を測り、どんな状況で誤りやすいかを説明できる。
- 屋外と屋内で頼れるセンサーが変わる理由を説明し、場面に合うセンサーを選ぶことができる。
- GNSS の乱れや喪失(マルチパス・電波妨害・なりすまし・磁気干渉)に気づき、位置保持が効かない状態でも安全側に操縦できる。
位置を知るしくみ(GNSS)
ドローンは自分の位置を「推定」する
ドローンには、人のように景色を見て「ここは駅の近く」と気づく目も、地図を広げる手もありません。あるのは、いくつかのセンサーの数字だけです。
そこで機体は、センサーの数字から自分の位置を計算します。測って、計算して、「たぶんここ」と見積もる。これを位置の推定と呼びます。
目を閉じて、まっすぐ 100 歩あるくとします。本当の歩幅は 70 cm なのに 72 cm だと思っていると、100 歩で約 2 m ずれます。歩くほど、ずれは足されて大きくなり、1000 歩なら同じ割合で約 20 m です。
歩数や向きを足し合わせて現在地を求める方法が推測航法です。機体では、IMU(加速度計とジャイロをまとめた慣性センサー)の動きを足していきます。誤差は積み重なるので、ときどき衛星の電波などの外の手がかりで現在地を直します。「推定して、直す」の繰り返しが航法の土台です。
衛星の電波で位置を知る
GNSSは、人工衛星の電波で位置を測る仕組みの総称です。GPS(米国)やみちびき(日本)などがあります。衛星は、自分の軌道の情報と、電波を送り出した時刻を、空に向けて放送しています。
衛星は機体の位置を知りません。受信機が、届いた時刻との差から電波の飛んだ時間 Δt を測り、距離を求めます。たとえば GPS の衛星は高さ約 2 万 km の軌道にいて、頭上の衛星なら電波は約 0.07 秒で届きます(衛星の種類によって軌道の高さは違います)。とても短い時間を測ることになります。
1 つの距離では、位置は円(空間では球)の上のどこかとしか言えません。図は平面の例で、2 つの円だけだと交点が 2 つ残り、3 つ目で 1 点に決まります。これが三辺測量です。空間では未知数が東西・南北・高さに受信機の時計のずれを加えた 4 つになり、最低 4 機の衛星を使います。
GNSS が乱れるとき
GNSS は強力ですが、いつも正確とは限りません。距離は「電波が飛んだ時間」から決まるので、電波の旅を狂わせるものが、そのまま位置の誤差になります。
主な原因は、大気による電波の遅れ、衛星の時計や軌道のわずかな誤差、そして建物などでの反射です。さらに衛星の並び方が悪いと、これらの誤差が位置に大きく響きます。空が広く開けた場所でも、ふつうの受信機の位置には数メートル規模のずれが残り、条件によって変わります。
- マルチパスと遮蔽: 壁で反射した電波は遠回りの分だけ距離が長く測れて、位置がずれます。高い建物に囲まれると、見える衛星も減ります。
- ジャミング: 強い雑音の電波で、微弱な衛星の電波を聞こえなくする妨害です。位置が「出なく」なります。
- スプーフィング: にせの衛星信号で、誤った位置や時刻を信じ込ませる妨害です。位置は「出る」のに間違っているので、気づきにくいことがあります。
位置が急に大きく飛ぶ、見える衛星の数が急に減る、止まっているのに位置が動く、機体の動きと GNSS の位置の変化が合わない。こうした兆候に気づいたら、無理に続けず、人や物から離れた場所に降ろす判断をします。妨害の電波を出す実験は、周りの機器にも危険なので、してはいけません。
このパートの演習(レッスンで解けます)
- GNSS が位置を決めるまで
- 時計の 1 マイクロ秒は何 m?
- 空が狭くなる場所を探す
GNSS 以外の手がかり
高さ・向き・動きの手がかり
GNSS は広い空の下で位置を教えてくれますが、高さは水平より誤差が大きくなりやすくなります。また、ふつうの(アンテナが 1 つの)GNSS は、向きを動いた方向から求めるので、止まっていると向きが出ません。そこで別のセンサーが苦手を補います。
- GNSS: 衛星の電波の到達時間から、絶対的な位置を知ります。建物のそば、屋内、妨害には弱くなります。
- 気圧計: 気圧から、高さの変化を知ります。小さな上下に敏感ですが、天気の変化や機体まわりの風で値が動きます。
- コンパス: 地球の磁場の向きから、機首の向きを知ります。鉄・電流・磁石の近くでは磁場が乱れ、向きがずれます。これが磁気干渉です。
- 光学フロー: 下向きのカメラで、地面の模様が画像の中でどれだけ動いたかを見て、動く速さを求めます。GNSS がなくても使えますが、模様の少ない面や暗い場所は苦手です。
- IMU: 加速度と角速度から、短い間の動きを知ります。速く、外に頼りませんが、誤差が時間とともに積み重なります。
気圧は、海面付近では高さが約 8 m 上がるごとに約 1 hPa(ヘクトパスカル)下がります。この換算でわかる気圧高度は、小さな上下に敏感です。ただし天気でも気圧は動くので、「海抜何 m」より「さっきからどれだけ変わったか」に強い手がかりです。
校正は、鉄骨の建物や車から離れた開けた場所で、取扱説明書の手順に従って行います。干渉の原因が近くにあると、校正してもずれが残ります。回数を増やすより、場所を変えるのが先です。
屋内では何を頼りにするか
屋内では、壁と屋根が衛星の電波を弱めるので、GNSS が使えないことが多くなります。鉄骨が多い建物では、コンパスも乱れやすくなります。場面ごとに、頼れる手がかりは変わります。
- 広い野外: GNSS・気圧計・コンパス・IMU が使えます。妨害やなりすましの兆候には注意します。
- 高いビルの間: GNSS は反射と遮蔽で乱れます。気圧計と IMU を支えにして、GNSS だけに頼りません。
- 屋内の倉庫: 光学フロー・下向きの距離センサー・IMU が頼りです。GNSS は使えず、鉄骨でコンパスも乱れやすくなります。
- 水面の上: GNSS・気圧計・IMU が使えます。水面は模様が少ないので、光学フローは効きにくくなります。
下向きの距離センサーは、音や光で床までの高さを直接測ります。光学フローと組み合わせると、床の上での動きと高さの両方がわかります。屋内でも気圧計は高さの小さな変化を測れますが、空調などで気圧が動くことがあります。
大切なのは、1 つの手がかりだけに頼らないことです。得意と苦手を組み合わせ、1 つが乱れたら別のものが支えます。建物の中に目印をあらかじめ置いて、位置の手がかりにする方式もあります。
足もとの情報と IMU だけで動きを追う方法も、時間がたつほど誤差が積み重なります。Lv2 では誤差を数で見積もる方法を、Lv3 では画像と IMU を組み合わせて誤差の積み重なりを抑える方法を学びます。
このパートの演習(レッスンで解けます)
- センサーと、苦手な状況
- コンパスの値が不安定なとき
- 屋内の倉庫で頼れるものは?
位置保持と、それを失うとき
位置保持と姿勢モード
位置保持とは、スティックを離したとき、機体が自分の位置を測りながらその場にとどまるよう制御することです。測った位置のずれを見て、少しずつ押し戻し続けるので、GPS モード(GNSS で位置を保つモード)では、離すとすぐ止まります。
GNSS を失うと、GNSS による位置の手がかりがなくなります。光学フローなども使えない状況(高所や、模様のない地面の上など)では、機体が姿勢モードに切り替わることがあります(機種によります)。水平方向を傾きだけで制御するので、離しても止まる基準がなく、風下へ流されます。
まず慌てずにスティックで機体を押さえます。流される向きと反対に、少し倒し続けるのが基本です。そのうえで、人や物から離れた広い場所に、ゆっくり降ろします。無理に目的地へ向かわず、降ろすことを優先し、手順は取扱説明書に従います。
触って確かめよう:この場面は、レッスンの中で操作して確かめられます。
このパートの演習(レッスンで解けます)
- 姿勢モードで流された機体を押さえるには
- GPS を失っても、落ち着いて降ろす
まとめ
- 位置は、衛星の電波が届くまでの時間から距離を求め、複数の衛星の距離が重なる点として決まる(受信機の時計のずれも含めて、最低 4 機)。
- 気圧・磁気・画像の手がかりには、それぞれ得意と苦手がある。気圧は高さの変化、コンパスは向き、光学フローは動きを教えてくれる。
- 屋内では GNSS が使えないことが多く、光学フローなど足もとの手がかりに頼る。1 つに頼らず、組み合わせる。
- GNSS は反射・妨害・なりすましで乱れる。位置が急に飛ぶなどの兆候に気づいたら、無理をせず降ろす判断をする。
- GPS を失って姿勢モードになると、スティックを離しても止まらず風に流される。流される向きと反対に押さえて、落ち着いて降ろす。
Lv2 では DOP と RTK で精度を数で表し、座標系・距離と方位を計算して、ウェイポイント飛行計画を Lint で検証する。
このレッスンの用語
- GNSS
- GPS(米国)やみちびき(日本)など、人工衛星の電波で自分の位置を測る仕組みの総称。全球測位衛星システム。
- 三辺測量(さんぺんそくりょう)
- 3 つ以上の基準点までの距離がわかるとき、その距離を半径とする円(球)が交わる点として位置を決める方法。
- 推測航法(すいそくこうほう)
- 出発点から進んだ向きと距離を足し合わせて現在地を求める方法。測定の誤差が少しずつ積み重なる。
- 気圧高度(きあつこうど)
- 気圧計で測った気圧から換算した高さ。高さの変化には強いが、天気で気圧が変わると基準がずれる。
- コンパス(こんぱす)
- 地球の磁場の向きを測り、機体がどちらを向いているか(機首方位)を求めるセンサー。
- 光学フロー(こうがくふろー)
- カメラの画像の中で地面の模様が動く量から、機体の動く速さを求める方法。
- マルチパス(まるちぱす)
- 衛星の電波が建物などで反射し、遠回りして届くこと。測る距離がのび、位置がずれる原因になる。
- ジャミング(じゃみんぐ)
- 強い雑音の電波を出して、微弱な衛星の電波を受信できなくする妨害。
- スプーフィング(すぷーふぃんぐ)
- にせの衛星信号を送り、受信機に誤った位置や時刻を信じ込ませる妨害。
- 磁気干渉(じきかんしょう)
- 鉄や電流、磁石の磁場がコンパスの測定を乱すこと。校正は鉄から離れた場所で行う。
- 位置保持(いちほじ)
- スティックを離したとき、機体が自分の位置を測りながらその場にとどまるよう制御すること。
- 姿勢モード(しせいもーど)
- GNSS による位置の手がかりを使わず、水平方向は機体の傾きだけを制御するモード(高さは気圧計などで保つ機種が多い)。離すと風に流される。
手を動かして確かめる
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更新日 ・シミュレーターは教育用の簡略モデルです